ベストテンのいちばん長い日
「追いかけます、お出かけならば何処までも」
ご存じ「オレ達の」ザ・ベストテンにおけるスローガンである。
この決まり文句とともに出演OKの歌手ならば、まるで地の果てまで追いかけそうなしつこさであらゆる場所で中継を敢行するのがベストテンという番組のウリのひとつ。
ただ生放送という番組の特性上、出演直前までの仕事の兼ね合いでスタジオや中継場所に間に合わなかったりする事がままありまして…
現代であれば番組に穴を開けるような無茶な出演スケジュールを組むなんて事はあり得ないが、なぜか当時はこんな事がまかり通っていたのである。
今回はベストテン史上でも最もてんやわんやだったかもしれない、伝説の回の顛末をご紹介したいと思います。
スターは遅れてやってくる
時は1982年の11月18日にさかのぼる。
この週の久米宏は登場するや否や時計をチラーミィしながら、いつにも増して「時間との戦いです」と、ただならぬ慌ただしさをアピールする挨拶から始まる。
こいつは何かが起きる悪寒…

それもそのはず、この週ではランキングに入っていそうな錚々たる面子が放送前に愛知県で別番組に出演しており、紅白顔負けの秒刻みでのタイムスケジュールが予想されたからである。
その気になる顔ぶれは…シブがき隊、中森明菜、松田聖子、そして田原俊彦。
まさに時代のド真ん中にいる豪華絢爛のラインナップだ。
その中で先鋒を務めるシブがき隊は9位にランクイン。
彼らの中でも一足早く東京へと向かっているものの、まだ到着ならずってことで後へ繰り越しとなり、早くも波乱の幕が開く。(後に無事にスタジオにてパフォーマンス)
次に7位に入った明菜は中継地点である静岡放送の玄関前からの歌唱。
ちょうどパラパラで発表された直後に現場に到着するという、ヤラセを疑われるレベルのタイミングの良さだが、久米や現場の慌てっぷりからしてもどうやらガチだった模様。
既に大群衆と大量のガードマンが配備されており、大騒ぎの玄関前。
着いたばかりの明菜も状況を呑み込めないままで歌い、周りは興奮状態の野次馬であふれかえるというなかなかのカオスっぷり。
この時の私服姿で歌う明菜がメチャクチャかわいいんだわ、っていう話は横に置いといて…

喧騒の中で明菜の出番が終わり、4位の発表まで進むと次は聖子!…のはずが予定の静岡放送の現場に間に合わずにまた先送りとなる。
こんなに忙しいベストテンはかつて存在していたのだろうか?と思うほどの慌ただしさ。
そして先に3位のマッチが歌い終えた後にやっと聖子も到着!
息を切らしたままで『野ばらのエチュード』を歌い終えると彼女も矢のような速さで東京へ帰っていったのでした…
続いて2位の発表でやっとこ今回の主役のトシの出番である。我ながら前フリが長すぎるぜ?
この時点でもう1000文字以上使ってるよ…(白眼)
今回は11作目の『誘惑スレスレ』での登場となるはずなのだが…

リリース 1982年10月15日
作詞 宮下智
作曲 網倉一也
編曲 馬飼野康二
オリコン 1位
ベストテン 1位
売上げ 38万枚
主役は遅れて間に合わず…
例によって彼も到着に手間取ることに。放送時間も残りわずか。
止むなく1位の渡辺徹を先に歌わせ、あとは運を天に任せるように彼の到着を待つのみ…
そんな切羽詰まった番組の終わり間際に、衝撃の情報がもたらされる。
なんと運転手が道を間違え、ガチで渡辺真知子の「ひとつ曲がり角 ひとつ間違えて 迷い道くねくね~♪」状態に陥ってしまっていたのだ!
情報を聴いた現地の野次馬達からも悲鳴が起こる。
この緊急事態にはスタッフサイドもトシ一行も口を揃えて『どうする?』と、口走った事だろう。

それでも放送ギリギリまで粘った末に、遂にトシの乗った車が局前の信号地点まで辿り着いたとの報が入る!
歓喜に沸く群衆!あと!あと目的地まで50メートル!
…が!
彼を待ちわびる上原孝男アナの「トシちゃ~ん!」の悲痛な叫びが木霊する中で、番組のスタッフロールが流れ、願い虚しくタイムリミット来たる…

ザ・エンドってね♪
結局トシが到着したのは放送終了から25秒後の事であった…
…こんな…こんな消化不良な終わり方って…無いよ…ナイヨ…ナイト…
まあ運転手のやらかしもデカいが、やはりスケジュール的に無理があったかもしれない。
いかにも80年代って感じのゆるゆるな番組構成の一幕である。
しかしもうこうなった以上は、トシもベストテンスタッフともども次週でこの鬱憤を晴らすしかない!
意地を見せたリベンジ回
翌週の11月25日の放送回では先週の番組終了後でも念の為にカメラは回しておいてあり、以降の数分間がどういう状況だったのかを紹介。
到着後のトシは放送時間内に間に合ったと思い、アへ顔なしの余裕のダブルピースでお出まし!
しかし2階への移動中で既に番組が終わったことを知ってガックリと肩を落とす。
それでも大観衆の前で『誘惑スレスレ』を歌うが、録画時間の都合上(?)途中で切れてしまい「テストパターン」と呼ばれる深夜のテレビでよく見るアレの画面に切り替わってしまう。
転んでもただでは起きないベストテンスタッフはそれを見事に有効活用する秘策を思いつく。
前回の歌唱中の映像からテストパターンに変わった瞬間を発泡スチロール状の壁に合成し、そこをトシが突き破って登場!
それから続きを歌うというイキな演出!


「ウルトラマンA」におけるバキシム出現を彷彿とさせるシーンである。センスあるわぁ~

混乱続きだった前回放送にカッコよくケリをつけ、慌ただしかったベストテンの二週間はこうして終わりを告げたのでした…
色々あったけどナンダカンダで大団円って感じ?
これ以外にもトラブル関係のネタには事欠かないベストテンだ。
今後のハプニング劇にも乞うご期待!
ってところで今回はこの辺で!や~ったぜヨロシクぅ!

