最も愛したV系バンド
ヴィジュアル系(以下V系)…1990年代末期の邦楽界に数々の伝説を打ち立て、そして覇権を握った日本独自の一大ジャンルである。
当時のナウなヤング達は彼らに熱狂し、そして酔いしれた。
そして在りし日のアタシも、その沼にどっぷりと浸かったのは言うまでもない。
そのV系ムーブメントの一角として鎮座ましましたのが今回の主役、そうだ「オレ達の」…

「LUNA SEA」!!
今回はそんな彼らのインディーズデビュー作、『LUNA SEA』について語っちゃうぜ!
全員が神奈川出身の暴れん坊達で結成された五人組。
元々はギターのINORANとベースのJが在籍していたバンド「LUNACY」が起こりであり、そこに別バンドで活動していたギターのSUGIZOとドラムスの真矢が加入。
最後にヴォーカルのRYUICHIが彼らにドーナツを差し入れた事で五つのピースが完成する。
それに伴い、バンド名もさらなるイメージを深める為に現行名に変更。
若くして独特の美意識を持つ彼ら。
己の全てをぶつける決死のパフォーマンスに自分たちの姿を重ねたのか、現場を見たX(JAPAN)のHIDEに「…ほう、なかなか見どころのある連中やん?よっしゃ、YOSHIKIに紹介したろ!」と見初められる。
そして、インディーズデビュー
話はとんとん拍子に進み、XのリーダーであるYOSHIKIが主宰するエクスタシーレコードからインディーズデビューする事になる彼ら。
ここから始まるXとLUNA SEAの「義兄弟」というべき美しき関係性。
そして1991年4月21日、彼らの全精力を注ぎこんだ1st『LUNA SEA』が誕生。
若々しくエネルギッシュに満ち満ちた渾身の一作だ。

01. FATE
02. TIME IS DEAD
03. SANDY TIME
04. BRANCH ROAD
05. SHADE
06. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
07. THE SLAIN
08. CHESS
09. MOON
10. PRECIOUS…
冒頭からライブではメンバーとの「フェイッ!」の掛け合いが楽しい僅か1分20秒のアンセム『FATE』から始まり…
間髪入れず「キュイーーーン」とスライドするギターで早くもリスナーを昇天させてしまうスピードナンバー『TIME IS DEAD』のコンボでこれがホントの「エクスタシーレコード」って感じ?
そして『好きすぎて バカみたい』になっちゃう程にお気に入りなナンバー『PRECIOUS…』で締めくくる全10曲で収録時間は僅か38分という、凝縮された漢感あふれる名盤。

本当にインディーズの一作目なのか?と思わせる構成力、演奏力、そして世界観の構築…
こいつら既に出来上がってやがる…と感服せざるを得ない至高の完成度にただ唸るしかない。
恐れを知らぬ若者たちの強烈なアティテュード(SUGIZO風)を詰め込んだ逸品である。
後年メンバー達はこの作品を聴いて「うわっ…私たちの演奏力低すぎ…?」とか思ったらしいが、十分すぎるくらいじゃないっスか?
そういえばインディーズ時代からの盟友である灰猫…じゃなかった西川貴教も打ち上げで同席した際に、自身のバンドとは明らかに違うストイックなLUNA SEAの姿に衝撃を受けて脱退を決意した、なんて話もあるほどギラギラしまくってた当時の彼ら。

自らに課した音楽に対する向上心が、いかに高かったかを物語るエピソードである。
このアルバムでよく問題視される音質についてだが、インディーズ故にお察しください…
特に気になるのがRYUICHIの声が割れ気味なのと、シンバル系の音が鼓膜に突き刺さるほどデカい点。
とにかく「勢いだけで突っ走る」感であふれた収録風景が目に浮かぶサウンドプロダクションだ。
人はそれを野獣と呼ぶ
そして最後に語るべきは、もはやヒトを超えて野獣と化したRYUICHIのヴォーカルだろう。
かつてのバンド名を体現するような、狂気と怒りを込めた歌声は本作ならではのものだ。
それでは皆さんに聴いていただきましょう。
本アルバムの中で最大の推し曲…『PRECIOUS…』!
「たっいっせっつっなっこっとばァ~!!!」
どうですか、この剝き出しの感情をさらけ出し吠えまくる姿は!ッセイ!ッセイ!
最も一般に知られた時期である「抱きしめつぇ~ん♪」なねっとりボイス期のRYUICHIは影も形もなく、その時の彼しか知らない人なら初聴時には仰天するしかない威風堂々たるもの。
なにせビジュアルもこの違いである。


この二つの画が同一人物ってサジ?

余りの見た目のギャップに誰もが目を疑うことだろう。
ただ外見のみならず、各時代ごとのRYUICHIの歌声の変遷もLUNA SEAの楽しみ方の一つである。
再結成後には原点回帰という意味も込めてか、再録盤もリリースしているがいまいちハマれず…
なので、個人的にはたとえ音が悪かろうと野性味あふれるインディーズ盤を推したい。
後のV系シーンをXと共に一足早く引っ張っていく、そんな彼らの初期衝動を聴き逃すな!
どうでもいい話だけど、『FATE』のラストの歌詞に載ってないトコ、「実際、忘れ~♪」にしか聞こえないアタシなんですが、皆さんはどうスか?
それでは今日はこの辺で!デンデンデフェイツッ!

