無名時代のロニー作品
過去には全く評価されなかった物、人物が後になって称賛される…
そんな事例は「たまによくある」話として聞くこともあったりします。
一番の有名どころではゴッホだが、音楽の世界でも「その筋」の方面で話題になる、とあるアルバムの事を忘れてはならない。
そうだ、あのリッチー・ブラックモアが権勢を振るい、後にハードロック界のレジェンドバンドとして名を連ねることになる「RAINBOW」…
その初代ヴォーカリスト「ロニー・ジェイムス・ディオ」が在籍、そしてレインボーの母体となったバンド「Elf(エルフ)」の1stアルバム『エルフ』である。

ヴォーカル・ベース ロナルド・パダヴォナ
ギター デヴィッド・フェンスティン
ピアノ ミッキー・リー・ソウル
ドラムス ゲイリー・ドリスコール
本作はディープ・パープルのイアン・ペイスとロジャー・グローバーの二人による豪華すぎるプロデュースによって1972年にリリースされたデビューアルバム。
実はロニー・ジェイムス・ディオという名前は芸名であり、この時は本名のロナルド・パダヴォナで活動していた。
フザけた見た目と、イカした中身
レインボー以前のロニーの作品、しかもパープルメンバーが制作に関わっているとなれば俄然興味を増す人も多いだろう。
だがまずこの問題のジャケットで音楽ファンをふるい落としにかけてくる。

なぁにこれぇ?
この得体のしれない謎の人物、なんとロニーが扮装したもの。
殆どの人がこれ見た時点で「はい、サヨナラ」しちまうだろこんなの…
なんでこのデザインにOK出したんだよw
こんな内輪ウケ狙いとしか思えないジャケを見せられた日にゃ、キョーヘイさんも「ふざけるなぁ…」と『気分はもう戦争』状態になっちゃうぜ?
しかしふざけているのはジャケぐらいで、中身は至極まっとうなロックンロールアルバムだ。
- Hoochie Koochie Lady
- First Avenue
- Never More
- I’m Coming Back for You
- Sit Down Honey (Everything Will Be Alright)
- Dixie Lee Junction
- Love Me Like a Woman
- Gambler, Gambler
特にエルフ時代のハイライトナンバーと言ってもいいのが3曲目の『Never More』…!
祈りにも似た優しく包み込むようなロニーの歌声と、切なく響くピアノの伴奏からはじまり…
その流れでうっかりサンタナの『哀愁のヨーロッパ』を聴きたくなるようなメロウなギターのメロディーが重なり、我々の胸を締め付ける。
と、思いきや徐々に激しさを増していき、お得意のがなり声へと変化を遂げるロニーの歌唱。
それに追随してこちらも荒々しさを増していく演奏陣。
エルフの音楽性はホンキートンクやブルースロック調のナンバーが主体だが、プログレ風構成のこの曲は本アルバムの中でも異彩を放つ。
しかもプログレ界隈では日常茶飯事の無駄に長尺でダラダラした演奏をする事なく、4分以内で終わらせる素敵仕様。
さすがパープルの二人がプロデュースに名乗り出ただけの事はある力作である。
だがセールスは振るわず、これ以降も雌伏の時を過ごす事になる。
やがて彼らは生まれ変わる
以降も結果を出す事は叶わず、遂にはレインボーの誕生と共に消滅してしまった「無名バンド」エルフ…
しかし消滅後に「レインボーの前身バンド」として名が知られるという、皮肉な結果を辿ることになってしまう。
結局このアルバムに興味を持ったとしても最大のハードルは、やはりクセ強なジャケ写に尽きるだろうか?
これがベタにエルフの子供とか美女だったりしたらもっと注目されただろうに…
だが逆に言えば、我々のようなHR/HM界隈の中でもごく狭いファンにとっての「秘密の名盤」であり続けるのも、音楽の醍醐味ってヤツなのかもしれない。
エルフの中でも最も評価の高いアルバムと思われる本作。
ロニー好きなら見た目だけで忌避せずに、せめて『Never More』だけでも聴いてみてちょ!
てな所で今回はこの辺で!